あかいろモザイク

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【サッカー】順位決定方法の2大勢力「総得失点差」と「当該チーム間の直接対決」

今日はちょっと雑談色強めのサッカーの話題。レギュレーションの話です。

まず、サッカーでは複数チームが勝ち点(後述)で並んだ時に、勝ち点以外の様々な要素で順位を決定していきます。その中でも最優先して採用されるルールに「同グループ間での『総得失点差』」で決めるものと、「勝ち点が並んだ『当該チーム間の直接対決』結果」で決めるものがあります。

そんな両者の特色や採用している大会、それらのルールで明暗を分けた試合を紹介し、最後に両者に対する私見を述べていきたいと思います。

 

序:「勝ち点制」と順位決定方法

サッカーのリーグ戦は「勝ち点制」というものを採用している。勝ち点制は引き分けの概念のあるサッカーで勝利と引分を差別化して順位を決定するために、世界初のサッカーリーグであるフットボールリーグ(現:EFL)で採用されたのが始まりである。

多くの場合、勝利:3点、引分:両チーム1点、敗戦:0点で計算される。勝利が2点ではなく3点なのは選手に勝利への意欲を湧き立たせ、魅力あるゲームを作るため。Jリーグプレミアリーグなどの多数のチームが総当たりで30試合以上行う大会はもちろん、UEFAチャンピオンズリーグFIFAワールドカップなどのグループを細分化させて1グループ3~6試合で行われる大会もこの制度を採用している。そしてこの勝ち点をもっとも多く稼いだチームが優勝、またはそのグループで突破することができる。

そして勝ち点が並ぶと、前述のような勝ち点以外の方法で順位を決めなければならなくなる。得点や失点、得失点差、当該チーム間の直接対決など様々な要素があるが、その中でもまず「総得失点差」と「当該チーム間の直接対決結果」で決める場合はほとんどである。

 

「総得失点差」は結果だけでなく内容も追及

リーグ戦の順位表を見ると、順位決定の指標となる勝ち点の隣に得点や失点、そして得失点差が表記されていることが多い。得失点差は文字通り、(得点-失点)から換算される指標である。本記事ではリーグ戦の全日程終了時で記録された得失点差を「総得失点差」と表現する。

そしてこの総得失点差を、勝ち点が並んだ時に最初に参照するレギュレーションが国内外の多くの大会で採用されている。すなわち得失点差は勝ち点の次に重要な地位を占めることとなり、試合で勝つことはもちろんのこと、いかに得点を挙げられるか、失点を防ぐことができるかがカギとなる。観客側からしても、単にチームの勝利を見届けるだけでなく、どれほど得失点差を積み重ねられるかという目で試合を見ることができ、興行的なメリットも大きい。

一方で格下相手に大量得点で勝利し、得失点差を「ボロ稼ぎ」することができる問題点もある。長いシーズンを戦うクラブのリーグ戦ならまだしも、W杯のような短期決戦になると問題がより大きくなる。それが関係しているのかどうかは不明だが、UEFA主催大会はこのレギュレーションを優先して採用することを嫌う*1。また後述のように、このルールの問題点を突かれる形で日本のクラブが悲劇を見たケースもある。

これを優先して採用している大会は先述のFIFAワールドカップの他、JリーグAFCチャンピオンズリーグプレミアリーグブンデスリーガリーグアン等がある。日本ではほぼこちらのルールが優先して採用されているため、勝ち点で並んだら得失点差というのは半ば常識の域である。

 

得失点差が優勝or通過の明暗を分けたケース

プレミアリーグ2011-12シーズンの優勝争い

まずは1年間を戦う国内リーグ戦のケース。2011-12シーズンのプレミアリーグファーガソン監督の下リーグの覇権を握っていたマンチェスター・ユナイテッドと、オイルマネーで急激に力を付けていたマンチェスター・シティの、同都市にホームを置く2クラブが優勝を争っていた。

38試合制で行われるプレミアリーグ。37節終了時で両者同じく勝ち点86で並んでおり、得失点差はユナイテッドが+55、シティが+63でそれぞれの最終節を迎えた。最終節の対戦カードはユナイテッドvsサンダーランド、シティvsQPRであった。

まずは2位のユナイテッドが1-0で勝利、シティの状況を見守るのみとなった。そして首位シティだが、後半終了間際で1-2のビハインドを負う絶望的な状況に立たされていた。2点必要な状況で、アディショナルタイムにジェコ(現ローマ)が同点弾、そして直後にアグエロが逆転弾を叩き込んだ。試合はそのまま終了し、シティは土壇場で勝ち点3を積み上げた。前述の通り、得失点差で優位に立っていたシティが44年ぶりのリーグ優勝を果たした。

プレミアリーグにおいて、同一勝ち点で総得失点差の優劣で優勝チームが決定したのはこのシーズンが唯一。

www.youtube.com

 

AFCチャンピオンズリーグ2004のグループG

続いては短期間で行われる国際大会のグループステージのケース。2004年のACLは2003年のJ1を制した横浜F・マリノスらが入っていた。同組には韓国の城南一和天馬(現城南FC)、インドネシアのペルシク・クディリ、ベトナムのビンディンが入っていた。なお当時はオーストラリアはAFCではなくOFC加盟で、その他出場枠も大きく異なっていたためグループリーグに東南アジア勢が多く入っていた。なお、突破条件も現在とは異なり各組1位のみ

このグループでは第4節までマリノスと城南がそれぞれ勝点9を稼ぎ、両者の直接対決も1-2、1-0と互角の状況であった。この時の得失点差はマリノス+7、城南+3であった。

ところが第5節、マリノスはビンディン相手に6発で快勝する一方、城南がペルシク相手に15点も上げ、マリノス+13、城南+18と得失点差で一気に突き放された。最終節はマリノスが4-1、城南が3-1で勝利し、勝点は15で並んだもののやはり得失点差を逆転できず、グループ2位で敗退した。

城南は格下相手にボロ稼ぎして突破する、当ルールの利点でもあり問題点をうまく突いて突破したともいえる。マリノスも直接対決以外はきっちり勝点3を持ち帰れたものの、レギュレーションと不運に見舞われる形となった。

本大会に関してはWikipedia以外にソースが見つかりませんでした。ご了承くださいorz

ja.wikipedia.org

 

余談

ペップ就任後、毎試合のように大量得点で勝ち続けているマンチェスター・シティはこのルールとの相性が非常に良い。優勝争いから脱落しつつある今季においても、勝った試合は依然として大量得点を挙げることが多く、得失点差は首位リバプールから大きく離されていない。仮に勝ち点が縮まるとシティが得失点差を背景に優位に立つこともあり得る。ライバルと実力差が大きいブンデスにおけるバイエルンや、リーグアンにおけるPSGも同様。リバプールファンである以上、あまりこういった文章は書きたくなかったが、本ルールの良い参考例だったので一応。

 

「当該チーム間の直接対決結果」は格下相手へのボロ稼ぎを防ぐ

勝ち点が並んだ際の順位決定方法としてもう1つ、並んだチーム同士、つまり当該チーム間の直接対決の結果で順位を決定するという方式である。この場合、直接対決以外の成績は全く見られないのが特徴であり、勝ち点が並んだ時に純粋にどちらが上だったかを決めることができる。ホーム&アウェイ2回戦制ノックアウト方式の2戦合計スコアで決定する方式を、リーグ戦で導入したものである。また多くの場合、このルールを適用しても同点だった場合、当該チーム間のアウェイゴール差で決定することが多い。

また総得失点差の問題点であった、格下チームへの勝ち点ボロ稼ぎもこのルールの下ではできない。EURO予選がUCLグループステージではグループステージにビッグクラブor強豪国とスモールクラブor中小国が同時に居座ることが多いが、このルールの存在により強いチームが弱いチームから銀行のように得点を大量融資してもらうことはできなくなっている。

一方で問題もいくつかある。1つ目はこのルール自体がやや煩雑で、データを参照する手間がかかるという点。勝ち点が並んだらそれらのチームの直接対決を参照して、そこから順位を割り出さなければならない。参加する全チームの得失点差が見られる前述のルールとは違い、基本的に順位表から直接優劣の違いが見られない。2つ目はこのルールでは消化試合が発生しやすくなる点。グループステージH&A2回戦制のUCLによく見られ、「勝てば2位相手と勝ち点で並ぶのに、直接対決で既に負け越してしまっている・・・!」となり、逆転の可能性が潰えてしまう。総得失点差も大量点差が生まれれば絶望的であることには変わりは無いものの、わずかな可能性を信じサポーターは応援するであろう。

これを優先して採用している大会はUEFAチャンピオンズリーグUEFA EUROセリエAラ・リーガ等。Jクラブが参加する大会でこのルールを採用している大会はないが、日本のフットサルの大会ではこちらの方が採用されることが多い。

 

当該チーム間の直接対決が優勝or通過の明暗を分けたケース

①UEFA EURO2004のグループC

まずは欧州選手権(EURO)のケース。前述のように当該チーム間~優先で知られるこの大会だが、2004年大会からこのレギュレーションになった(なお、結果で並んだ場合は、当該チーム間の総得点がまず参照される)。しかしこれを巡って、ある騒動が起こった。

まずは見出しにも書いたグループCについて。上位2チームが決勝トーナメントに進むことができるレギュレーション。スウェーデンデンマークが2試合を終えて1勝1分、イタリアが2分、ブルガリアは2敗という状況であった。イタリアはスウェーデン戦で1-1、デンマーク戦で0-0で、決勝トーナメント進出を争う2チームとすでに対戦を終えていた。一方でスウェーデンデンマークは共にブルガリアに勝利し、前述通りイタリアに引き分け、最終節で直接対決を待つ状況であった。

ブルガリアは最終節で勝点3を得てもスウェーデンデンマークを上回ることはできないため敗退が決定しており、この地点でスウェーデンデンマーク、イタリアの3チームに絞られる形となった。

第2節終了時
試合数 得点 失点 勝点
スウェーデン 2 6 1 4
デンマーク 2 2 0 4
イタリア 2 1 1 2
ブルガリア 2 0 7 0

※最終節の対戦カードはスウェーデンvsデンマークイタリアvsブルガリア

 

イタリアはブルガリア戦での勝利が絶対条件で、さらにスウェーデンvsデンマークがどちらか勝利or1-1以下の引き分けが必要だった。しかし両者が2-2以上で引き分けると、イタリアは何点取って勝とうが突破が不可能になる。これは両者との対戦で合計1得点しか挙げておらず、当該チーム間の結果の次に当該チーム間の総得点が参照されるため。そのためにイタリアは試合前にスウェーデンデンマークに対し、談合を行わないように伝達していた模様。

そして最終節、イタリアはブルガリアに2-1で勝利し最低条件をクリアしたが、スウェーデンデンマークは2-2で引き分け。スウェーデンデンマークが共に3チーム間の順位表で2得点以上をマークしたことで、スウェーデンデンマークは突破を決め、イタリアは敗退が決定。イタリアが想定していた最悪の結果となり、EUROの舞台から去った。

3チーム間の最終結
  スウェーデン デンマーク イタリア 得点 失点 勝点
スウェーデン x 2-2 1-1 3 3 2
デンマーク 2-2 x 0-0 2 2 2
イタリア 1-1 0-0 x 1 1 2

 

大会後、イタリアのGKブッフォンらが抗議を訴えたが、結局UEFAからの調査は入らなかった模様。このケースは「当該チーム間の総得点差」が絡んだ特殊なケースではあるものの、「当該チーム間~」のレギュレーションがイタリアの命運を分ける形となった(なお、総得失点差優先のレギュレーションで史実通り2-1で勝っていた場合、今度は総得失点差で敗退となるため、3得点以上必要にはなるが)。

なおイタリアが得点力不足に陥ったのは、当時のエースであったトッティが本大会中に相手選手に唾を吐き、長期間の出場停止処分を受けたのが響いているとされている。

www.uefa.com

 

UEFAチャンピオンズリーグ2017-18のグループE

総得失点差と比べて特筆すべきケースが少ないので、ここでは①とは異なり「起こりえた」ケースについても紹介しておく。

この年のCLのグループEは、翌シーズンにビッグイヤーを手にすることになるリヴァプールが所属していたグループ。ライバルはEL3連覇経験のあるスペインの中堅セビージャとロシア王者スパルタク・モスクワ、そしてスロベニア王者マリボルの3チーム。

リヴァプールは5節終了地点で2勝3分0敗(勝点9)。対するセビージャは2勝1分2敗(勝点7)、そしてわずかに望みを繋いでいるスパルタクは1勝3分1敗(勝点6)。なおマリボルは0勝2分3敗で敗退済み。最終節はリヴァプールvsスパルタクセビージャvsマリボルであった。

首位リヴァプールが優位な状況ではあるものの、当該チーム間~優先のレギュレーションであるため、仮にリヴァプールが敗れてセビージャが勝つと、リヴァプール-セビージャ間の2戦合計5-5(3-3,2-2)、アウェイゴール差でセビージャが1点上回っているため敗退の可能性があった。リヴァプールはアウェイのスパルタク戦で引き分けており、またセビージャは敗退済みで格下のマリボルであったため、「もしかしたら」の可能性もささやかれていた。

しかしリヴァプールはわずかな望みを繋いでいたスパルタク相手に7発快勝。一方で首位で突破して決勝トーナメントを優位な状況で迎えたかった*2セビージャがマリボルにまさかのドローを喫した。結果、リヴァプールは勝点12を積み首位で突破、セビージャは勝点8を積み2位で突破した。

その後リヴァプールポルト、シティ、ローマを破るもレアルに敗れ準優勝。各試合の内容についてはググるべし(というよりも特に決勝は思い出したくない)。一方でセビージャはラウンド16で当時のプレミアリーグ王者のレスターに敗れ大会を去っている。

www.uefa.com

 

結局どっちの方が良いのか

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個人的には大会のレギュレーションにかかわらず、総得失点差の方が良いと思う。勝つか負けるだけかじゃなく、何点差を付けられたという点でもサッカーを楽しみたいという単純な理由もあるが、当該チーム間~だと消化試合が生まれやすくリスクがあるので。あとは当該チーム間~だと最終節近くなって、優勝争いや残留争いで計算するのに手間がかかるので。

 

以上です。皆さんはどちらのほうがお好きでしょうか?

*1:唯一、2018年W杯予選は当ルールを優先して採用している

*2:UEFAチャンピオンズリーグでは首位突破するとシードとして、第2戦をホームで迎えることができる