皆さんこんにちは。小路あかりです。
今回も「まんがタイムきらら」系列のアニメ化作品を振り返っていこうかと思います。
本企画は全4パート構成で進めていきます。Part2は2010年代前半(2010~2014年)の作品や当時の情勢を扱っていこうかと思います。「けいおん!」の大ヒットから百合モノの台頭、そして「ごちうさ」の登場などきらら史でも特に変化の多い時期になっております。
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①けいおんブームに沸いた2010年・2011年
1期で得た勢いをそのままに、2010年に2期にあたる「けいおん!!」が放送。きらら史上初かつ史上唯一の2クールで放映された本作は、進化した日常描写と終盤の涙を誘う内容等で圧倒的な人気を獲得。円盤やCD等の関連商品も爆売れし、OP曲「GO!GO!MANIAC」はオリコン週間1位など特筆すべき記録を数々達成した。結果として、きららや京アニのみならず、2010年代前半を代表するアニメの1つに数えられるようになった。そして2011年末にきらら作品では史上初となる劇場版が公開。1か月で観客動員数100万人を突破し、半年間で興行収入19億円超を記録するヒット作となった(深夜帯の劇場版では歴代8位を記録)。
2010年ではもう1つ忘れてはいけないのが、冬にひだまり3期「ひだまりスケッチ×☆☆☆」が放送された。きらら史上初でごちうさ以前では唯一だった3期のステージに立った本作では、主要キャラが進級しひだまり荘の新入生として乃莉となずなが新登場。オーソドックスながらも新たな変化を加えたことで飽きを感じさせない内容となった。なお2010年に放送されたのはこの2本のみであり、完全新作のアニメ化が1本も無かった唯一の年となっている。
翌2011年では2作品が放送。冬放送「夢喰いメリー」は4コマではない一般的なコマで構成された「まんがタイムきららフォワード」初のアニメ化作品となった。シリアスおよびバトル主体の世界観と作風で従来のきらら作品とは一線を画す展開となったが、原作とは大きく異なる結末で物議を醸した。なお、現在では人気声優の佐倉綾音が初めて主演を演じた作品としても知られる。
春には「Aチャンネル」が放送された。女子高生たちの日常を中心に描いた「王道日常系」に数えられる一作ではあるが、毎回Bパートに挿入歌が入るという特徴的な構成を持っている。なお放送当時は前述のけいおん人気が影響してか、「楽器を持たないけいおん」という評価がされていた模様。円盤の売り上げもそこそこ好調だったが、その後の映像展開は2012年のOVAの発売のみに留まっているのが悔やまれる。
2011年はこの2作品に加え、秋に「ひだまりスケッチ」の特別編(SP)が放送され、計3本が放送された。ただし特別編は2話のみの放送で、フル放送に限れば夏と秋の2クールでスパンを置いたこととなる。2010年代で2クールアニメ化されなかったのはこの年と2019年の冬春間(18秋のアニマエール!から19夏のまちカドまぞくの間)のみである。
と、ここまで触れてこなかったが、2011年といえば「魔法少女まどか☆マギカ」が放送された年である。放送前の予想を大きく覆す展開と衝撃的な結末を迎えた本作は社会現象を起こし、現在もシリーズ展開*1が続いている本作は、きらら本誌を発行する芳文社が製作委員会に参加していた。キャラデザは「ひだまり」の蒼樹うめ先生が担当し、芳文社からも関連雑誌(まんがタイムきらら☆マギカ)を発行していたことから「まどマギ」もきらら作品としてカウントする意見も見られるが、他のきらら作品との毛色の違いからきらら作品としてカウントされないことが多い(本記事においてもカウントしないこととする)。
②異端児「キルミーベイベー」のアニメ化と2012年の状況
けいおん劇場版が公開された翌月の2012年冬アニメとして、「キルミーベイベー」が放送。多少のバイオレンス描写を含んだ、癖のあるギャグを押し攻めたことが大きな特徴。当時の円盤売上こそ686枚(公式発表ではなく、集計サイトによる参考値)と厳しい結果となったが、その後も熱狂的なファンによる後押しもあり、2013年10月にOVAが発売された。OVAは5000枚ほど売れたとされており、TVシリーズの売上から大幅に上昇するのは極めて異例のケース。
その次の春クールには「あっちこっち」が放送。こちらは微ファンタジーのラブコメという部類であり、きらら作品では比較的珍しい男女の交流が主体となって描かれた。制作は「GA」と同じくAICで、きらら原作では2作品目の担当だったが、こちらは統一名義で制作されている。
この年TV放送されたきららアニメは以上に挙げた2作品と、秋に放送されたひだまり4期「ひだまりスケッチ ハニカム」の3作品だった。ひだまりはシリーズを通じ固定ファンの獲得と円盤の売り上げで安定しており、きららアニメでは唯一4期まで放送された作品である。2012年は史上初めて1年間で3作品アニメ化された年ではあるが、前後の年と比べるとやや大人しい年ではあった(芳文社としてはこの年劇場版が公開された「まどマギ」に注力していたのが大きいか)。
③難民枠の概念が生まれ、百合描写が台頭した2013年
2013年に入り、冬こそきらら作品は放送されなかったが、春に「ゆゆ式」が放送。Aチャンネル以来となる王道日常系の新作となった本作では学校行事などのイベントをほとんど描かず、日常描写に徹底した内容が高く評価された。こちらもキルミーのように円盤売上は芳しくなかったとされているが、同様に多くのファンに支えられ、2016年2月にOVAが発売されている。声優関係でも、種田梨沙が本作の縁ちゃん役の出演を皮切りに「きんモザ」「ごちうさ」と立て続けにきらら作品を担当し、人気声優への階段を上り始めた。
そして2013年夏には「きんいろモザイク」が放送。国際交流を主軸に王道日常系のフォーマットで展開された本作は、高品質アニオリで入った1話の勢いをそのままに、新作ではけいおん!以来となる2期放送を勝ち取った。さらに同年末には「ひだまりスケッチ」の特別編が放映。ヒロと沙英の卒業編が描かれ、これがアニメシリーズ最後の作品となっている。
この2作品の放送を前後して、作品の外では当時ネット文化の中心的存在だったニコニコ動画・ニコニコ生放送を中心に「難民枠」という概念が生まれる。日常系アニメのファンがそのクールの作品が終わるたびに次の作品に移住していく、といった思想が広まり、この概念はきらら以外の作品にも該当した。2010年代後半まできららは「難民枠」の最大の供給源として注目されるようになった。近年は「きららファンタジア」の存在や難民という考え方を良しとしない考え方が広まりつつあることもあり、死語になりつつある。
またこの頃からきらら作品では女性同士の恋愛、「百合描写」というものにスポットが当てられるようになる。「きんモザ」におけるシノとアリス、綾と陽子のカップリングが公式や二次創作の双方で多く描かれるようになり、後述する「ごちうさ」でもココアとチノ、リゼやシャロの絡みなどをカップリングとして意識する見方が広まっていった。これは2011年、2012年に百合×日常系でヒットを飛ばしたゆるゆり(百合姫)の存在が大きいと思われる(ただし、それ以前の作品に百合描写が見られなかったわけではないので注意)。
こうして2013年、フルで放映されたのは2作品しか放送されなかったものの、きらら史の中でもターニングポイントの年になった。
④挑戦的作品と新たな看板作が生まれた2014年
2014年に入り、きららからも百合主体の作品がアニメ化。2014年冬に「桜Trick」が放送された。女子生徒同士のキスシーンが毎回描かれるなど、従来よりもワンランク上の関係性を描いた。なお本作は「まんがタイムきららミラク」初のアニメ化作品で、本誌からアニメ化された作品はいずれも従来の日常系の枠から外れた作品となっている。
そして翌クールには、来月に3期放送を控えている「ご注文はうさぎですか?」が放送。こちらも王道日常系のフォーマットを取りつつも、洋風な街並みを舞台に個性的なキャラ達が放つ圧倒的な「かわいさ」を見せた結果、本作は圧倒的な人気を獲得し、早々に2期制作が決定。けいおん!以来となる積極的なメディアミックス・商品展開もあり、きららの新たな看板作に君臨した。
さらに同年夏には「ハナヤマタ」が放送。きららフォワードから久々のアニメ化となった本作は、一般的な部活モノ同様に笑いあり涙ありの起伏ある構造となったが、シリアスなシーンも躊躇なく入ったことで、日常描写特化型の作品が続いていた中でやや硬めの作風となっている。なお原作者の新作である「おちこぼれフルーツタルト」が来月より放送予定。
王道多めの2013年から打って変わって、挑戦的な作品も目立った2014年。この年は2年ぶりに1年で3作品がアニメ化されたが、ここからきらら作品のアニメ化のペースが一気に加速していく。作品外の話題としてはこの年から2017年まで毎年、リアルイベントである「まんがタイムきららフェスタ!」が開催され、その年のアニメ化作品とその声優陣たちが参加した。
④コラム:シリアス描写と男キャラの必要性
多くのきらら作品には2つの特徴を持っているとされており、その有無についてよく議論されている。
まず1つ目はシリアス描写が極力避けられている点である。4コマでない「フォワード」を除き多くの作品でこの特徴を持っており、辛いシーンが無く、キャラクター達が幸せそうにしている描写で終始することがきらら作品を支持ないし応援しているファンも多いとされる。しかし裏を返せば起伏がないことになり、刺激を求めているアニメファンからは敬遠されているという現状もある。
2つ目に男キャラが主要キャラにいない点である。今回のパートでは「あっちこっち」を除きこの特徴を持っている。これに関しては様々な意見があるが、そのうち代表的なものとして「女の子たちの空間に異性が入ると恋愛描写が入ることがありそれが目障りになる」などといったものがある。特にこの5年間ではこの特徴を持った作品が多く登場したことにより、2010年代後半以降も「きらら=男が出しゃばらない」ことが半ば当たり前のこととして認識されるようになっていった。
しかしこの結果が、後にマイナスに影響した事象もある。その1つにPart3で詳細を取り上げる「きららファンタジア」の参戦要件に壁ができてしまったことである。本作は「男の娘」であるひでり(ブレンド・S)を除き男性キャラクターが参戦できておらず(エイプリルフールのイベントは別)、キャラクターを活躍させるうえで男キャラの存在が不可欠であるあっちこっちが参戦することができていない。微ファンタジー要素を含む本作では参戦すれば活躍すること間違いなしだが、前述のような流れが大きく支持されている現状、参戦に至れていないのは残念でしかない。個人的には、ステラのまほうの裕美音と絡めれば面白くなりそうw
最後に・データ集
2010年代前半の5年間のきらら作品は認知度や人気などで飛躍を遂げ、かつ大きな転換点を迎えました。
2010年代前半に放送開始したシリーズのうち、ごちうさは3期が10月より、きんモザは時期こそ未定ですが劇場版の公開が決定しております。両者ともに、映像化のみならずコンテンツが長く続くことを願いたいです。
最後に2010~2014年にTVアニメで放送された作品をまとめます。劇場版に関してはTV作品と比べ本数が少ないので、最終パートでまとめる予定です。最後までお読みいただきありがとうございました。
作品名 | 掲載誌(略称) | 放送時期 | アニメーション制作 | 備考 |
---|---|---|---|---|
ひだまりスケッチ×☆☆☆ | キャラット | 2010年冬 | シャフト | 3期 |
けいおん!! | きらら/キャラット | 2020年春・夏 | 京都アニメーション | 2期、2クール |
夢喰いメリー | フォワード | 2011年冬 | J.C.STAFF | |
Aチャンネル | キャラット | 2011年春 | スタジオ五組 | スタジオ五組の元請デビュー作 |
ひだまりスケッチ×SP | キャラット | 2011年秋 | シャフト | 特別編、全2話 |
キルミーベイベー | キャラット | 2012年冬 | J.C.STAFF | |
あっちこっち | きらら | 2012年春 | AIC | 制作スタジオは明記されず(統一名義) |
ひだまりスケッチ ハニカム | キャラット | 2012年秋 | シャフト | 4期 |
ゆゆ式 | きらら | 2013年春 | キネマシトラス | |
きんいろモザイク | MAX | 2013年夏 | スタジオ五組 | 1期 |
ひだまりスケッチ 沙英・ヒロ卒業編 | キャラット | 2013年秋 | シャフト | 4期の後を描いたOVA、全2話(後にBS-TBSでも放送) |
桜Trick | ミラク | 2014年冬 | スタジオディーン | |
ご注文はうさぎですか? | MAX | 2014年春 | White Fox | 1期 |
ハナヤマタ | フォワード | 2014年夏 | マッドハウス |