毎年恒例のユニフォームレビュー、後半戦です。今年もドット絵は用意していませんが、各クラブのユニフォームを紹介しているリンクを掲載しました。前半のリンクはこちらからどうぞ。
ユニフォームトピックス
胸番号の採用クラブは大幅減少
胸番号の掲出自由化から3シーズン目となった2021シーズン。統一フォントの影響でどうなるかと思われたが、開幕前で掲出が確定したのは広島と柏、清水、徳島の4クラブのみ。これらのクラブはいずれも昨シーズンも掲出していたクラブである。一方で昨シーズンまで掲出していたG大阪、大分、川崎は非掲出が確定。J2以下でも廃止の流れが加速している。
ユニフォームレビュー
今シーズンは発表順に並べています(今回は、年明けに発表された10クラブ分のみです)。採点は1st/2nd/3rdの順で、特筆の無い限りはリーグ戦用です。
柏レイソル
メーカー:YONEX 採点:3.5/2.0
現代では珍しく2シーズン毎にデザインを変更している柏レイソル。奇数年に入るにあたって新デザインに切り替わったが、今回はホーム・アウェイ共にリーグ優勝を果たした2011年の復刻デザインとなった。
ホームは伝統の黄色地のシャツに黒のピンストライプを添えた。パンツとソックスは共に黒で、こちらも2011年の配色を踏襲。オリジナル同様、シンプルでかつスッキリした印象を与える。復刻デザインではあるものの、相違点は結構多く、オリジナルで使用されていた赤のアクセントは使用されず、ピンストライプもオリジナルでは白と水色の2色が使用されていた。使用色を絞って統一感を持たせたのは良い。しかしオリジナルでは袖にも引かれていたストライプ、今回は胸部分のみの採用となっている。ここも黒のピンストライプを引いていれば、もっと統一感が生まれていたのだが。その他、オリジナルではパンツやソックスにも数か所アクセントが散りばめられていたが、こちらを削除したり簡略化したのは良き。白ベタのスポンサー掲示がないのも好印象。
アウェイは全身白で、こちらも2011年の配色と踏襲。オリジナルと同じくホーム用の黄色および黒を抜いただけの手抜きデザインだが、そこまで合わせなくても良かった気が・・・。
ちなみに胸番号の位置も異なり、オリジナルの右胸から中央に移動している。ただ配置があまりに下過ぎてバランスが悪い気が。フォントカラーはシャツは黒、パンツはなんと黄色ではなく白を採用した。統一感は何処へ。また、オリジナルではまだ採用されていなかった背ネームは今回採用される。
FC東京
メーカー:NewBalance(今季よりUNBROから変更) 採点:5.0/3.0
ルヴァンカップ王者のFC東京。今季よりサプライヤーがNewBalanceに交代し、発表前から公式で大々的な企画が行われるなどその自信をうかがわせていた。
ホームはクラブカラーである青と赤でストライプでまとめたシンプルな仕上がりとなった。またシャツ全体にはうっすらとしたカモフラージュが描かれている(本当にうっすらとしているので、至近距離から撮影した画像でないと分からないレベル)。パンツは青、ソックスは赤で、このカラーリングはUNBROから継続した形となる。今季Jユニ一番の完成度なのではないだろうかというくらいの衝撃。クラブの個性と伝えるべきポイントを簡潔にわかりやすくを表現した完璧なデザインである。海外じゃこのくらい当たり前だけど、Jリーグでこのレベルのデザインを実現したのはもはや感動モノ。さらにスポンサーロゴも白抜きで統一されており、統一感の向上に一役買っている。背スポンサーのライフバルまで完全白抜きになったのは驚きだった。
アウェイは白地に赤と青のピンストライプ。味の素スタジアムからインスピレーションを受けたデザイン(とクラブ公式では書かれているが、おそらく屋根の構造から着想を得たのだろうか)。スポンサーロゴ等は黒で統一した。ありきたりなデザインではあるがよくまとめられている。エンブレムまでモノクローム構造になっていなかったが、統一感の代償と称してクラブカラーを失わせるわけにはいかなかったとの判断だろうか。
オーセンティックモデルではエンブレムが刻印されている場所の裏にYou'll Never Walk Aloneが記されている。見えない所で個性を出していく所にこだわりを感じる。
ベガルタ仙台
メーカー:adidas 採点:5.0
シーズンを通じ低迷し、従来では降格圏内にあたる17位でフィニッシュ。ピッチ外でもネガティブなニュースが流れる中、元U-23日本代表監督の手倉森誠が監督復帰した。
ホームモデルは伝統のゴールド(赤みを帯びた黄色)×青×ゴールドを継続。シャツ胴部には黄色の稲妻のような透かしを入れ、アクセントはエンブレム、スポンサーロゴを含めてすべて青で統一された。統一感の塊とも取れるデザインで、クラブ史上最高のモデルと言っても過言ではない完成度となった。白ベタが未だに多いJユニで、ここまで徹底してきたのは驚きでしかない。さらに胸中央部には東日本大震災から10年を迎えるにあたってメッセージを刻印。年間を通じて掲示されるメッセージと思われ、震災を風化させないことをサッカークラブから意思表示することは非常に大事なことである。
アビスパ福岡
メーカー:YONEX 採点:4.0/4.0
昨季J2で最少失点を記録した堅守を武器に2016年以来、5シーズンぶりにJ1の舞台で戦うアビスパ福岡。Jリーグ屈指のエレベータクラブであり、コンサドーレとJ1で対戦するのは2001年以来20年ぶり(!)。
YONEX4年目のホームはネイビー地に銀色と水色のストライプを配した。銀色のストライプには、クラブ愛称およびマスコットに由来するハニカム構造(ハチの巣)を配した。また、胸スポンサーも交代し、地元企業の新日本製薬が新たに掲示された。誰が見てもカッコいいであろうネイビー地のカラーリングに反しない良きデザインとなった。ただ水色のストライプの使い方がややバランスを悪くしているので、銀色ストライプと同じような使い方でも良かったんじゃないかと思う。また濃色系ユニフォームであるが故に、スポンサーロゴの白ベタが多いのが気になる。多くのスポンサーが付くことはクラブ経営上良いことはあるが、見栄えというモノにも気を配って欲しいかと(こういう所はあまりお金が絡まないのでどうしても無視されがちではあるが)。
アウェイはホームと同デザインで、こちらもクラブカラーである銀色地を採用。福岡アウェイ=銀色の安定感。創設初期のホームユニを漂わせるデザインで良い。ただこちらもホーム同様、水色ストライプがどうしても気になる・・・。
ちなみにホーム用の配色がネイビーになったのは2004年から。それまではシルバー(というよりは白)がホームカラーだった。ネイビーが初使用されたのは2003年アウェイで、これが好評を博しホームとアウェイの配色を入れ替えたとされる。ただし、ネイビーの色合いはシーズンによって異なり、2015年以前は青がもう少し明るかった。
サガン鳥栖
メーカー:NewBalance 採点:3.0/4.0
数シーズン前から有力スポンサーが相次いで撤退し、苦境が続くサガン鳥栖。それでもシーズン終盤から今季開幕前にかけて新スポンサーとの契約案件もあり、立て直しへの兆しも見られる。
ホームは今季で採用から15年が経過した水色地に、左胸部(エンブレムの入っている方)にピンクのカモフラージュを表現。クラブ公式は直線的と表現しているが、個人的には熱気を感じるデザイン。昨年終盤より胸スポンサーを務める木村情報技術を始め、全スポンサーが白ベタであるが、経営状況やユニフォームの視認性の観点からは致し方なしか。ただ統一フォントの太い黒縁がどうしても気になってしまう。
アウェイはホームとは別デザインで、白地にクラブカラーである水色とピンクの変則ボーター。スピード感あふれるデザイン。アクセントはこれまで通りピンクに統一されており、背番号フォントは黒を採用することとなった。各クラブのユニフォームが出そろう度に、統一フォントによるカラー制限の影響を改めて実感する。
徳島ヴォルティス
メーカー:Mizuno 採点:3.5/2.5
初のJ2優勝を果たし、2014年以来のJ1昇格となった徳島。リカルド・ロドリゲス監督を浦和に引き抜かれたが、過去にレアル・マドリーの下部組織を指揮していたダニエル・ポジャートスが新たに監督に就任した。J参入の2005年以来Mizunoと契約しており、現在Mizunoと契約しているクラブでは最年長である。
ホームは青地に徳島県の象徴である渦潮を斜めストライプでデザイン。裾の緑で太陽の灯りを表現した。なお今回はシャツのみならず、パンツの裾付近にも表現されている。パンツで透かしを採用するのはかなり珍しい。透かしの使い方はやや古さも感じるが、ブレないコンセプトを持つことは地味ながら強い。なお今回はアクセントに赤を採用していない。
アウェイは白地にホームと同一デザインで、銀色のストライプで渦潮を表現している。徳島はこれまでホームとアウェイで別デザインを採用したことはないが、ホームにあった太陽の灯りを表すアクセントはアウェイにはなく、ホームとはまた違う雰囲気を出している。
横浜FC
メーカー:Soccer Juncky 採点:4.5/4.0
レギュレーション変更の影響もあり初のJ1残留、年間順位も従来のJ1残留圏内にあたる15位でフィニッシュした横浜FC。中村俊輔の背番号を「10」に変更した他、「カズ」こと三浦知良と契約延長した等、今季もレジェンドの話題に絶えない。
ホームモデルは従来と同じく水色だが、水色の明度を従来よりも落としている。胴部には紺色のピンストライプを引き、肩には襟から袖口にかけて金のラインを2本引いている。スポンサーロゴも白抜き中心で白ベタは1か所も無しと統一感のある構成となった。明度と落としていてかつシンプルなアクセントでまとめており、おしゃれなデザインとなった。今後の商品展開にも反映させると記載していたが、確かにこれは生かしやすいデザイン。全身はクラブフラッグに由来する水色シャツ×白パンツ×紺ソックスで、3シーズン連続の組み合わせとなった。横浜FCというと2010年代に下半身の配色をコロコロ変えていたが、今後はこの3色で固定するのだろうか。
アウェイは昨年と同じ白×紺×白で、ピンストライプは水色で表現している。同一デザインではあるが、ピンストライプをハッキリ主張した配色に。
大分トリニータ
メーカー:PUMA 採点:3.5/3.5
片野坂体制6年目の大分。今シーズンは福岡のJ1昇格もあり、九州ダービーが年4回開催される(J1では初)。
ホームモデルはこれまで通り青地で、今シーズンはクラブ史上初めて黒のパンツを採用(昨シーズンは黒のソックスを採用していた)。他クラブも採用しているPUMAの最新テンプレートに、胸部から裾にかけて三角形の変則ストライプが描かれている。トリニティから着想を得ているだとか。またストライプの透かしとして、温泉から着想を得た透かしが入っている。透かしの形状もクラブエンブレムの「T」に近い形状となっており、細部からこだわりを感じる。全体的に情報量が多めのデザインとはなっているが、黒パンツを採用したことにより従来の大分ユニの問題点だったチグハグさが解消されている。ソックスのストライプ(こちらもテンプレート)と合わせてストライプの主張具合が絶妙である(そう考えると2018年は酷かったね・・・)。
アウェイは白地でホームと同一デザイン。アクセントカラーは青で統一している。
今シーズンから統一フォントが導入され、J2やJ3を中心にそれまで背ネームを採用していなかったクラブも採用する動きが出ている中、大分は背ネームは採用しない模様。折角Jからフォントを用意してくれたのに、これは一体どういうことなのだろうか?
横浜F・マリノス
メーカー:adidas 採点:3.0/4.0
一昨年の王者マリノス。攻撃力は健在だったが、失点が相次ぎACLやリーグ戦では期待を下回る成績に終わった。
ホームモデルは従来通り青×白×赤に、セルティックなどでも採用されている丸首テンプレートを採用。首と袖に赤と白を使うクラシカルなデザインに、荒波をモチーフとした透かしを胴部全体に描いた。そして胸スポンサーの日産も新ロゴに切り替わった。J発足以前より親会社兼胸スポンサーとしてマリノスを支えているが、ロゴ色を白に変更した2001年以来2度目のモデルチェンジとなった。ここ近年は主張の強いデザインが続いていた中で、比較的落ち着いたデザインとなった。非常に良いデザインではあるが、ポップさのある統一フォントが載るとなるとちょっと質が下がってしまうのが残念(ちなみにパンツ用フォントは従来の赤ではなく黒を採用する模様)。
アウェイはホームとは異なるテンプレートで、今シーズンも白×紺×白の組み合わせ。裾から胸にかけて斜めストライプが描かれた、スタイリッシュなデザイン。紺色の使い方や細めのアクセントも相まって、高級感がよく出ている。パンツ裾の赤がちょっと主張強めだけど。
GKモデルはFP1stモデルとは異なる荒波の透かしが採用されており、より荒波感が強くなっている。ただ、波というよりは木目調な気がするけどw
川崎フロンターレ
メーカー:PUMA 採点:3.0/2.5/2.5/2.0
最後は昨シーズンのJ1王者である川崎フロンターレ。記録ずくしの昨シーズンとなったが、今シーズンはアジアの舞台でも圧倒的な攻撃力を発揮できるかの期待が集まる。
ホームモデルは水色地に黒袖、そして胴部にはボーダーを白と黒の2色で表現。黒袖の2020モデルとボーダーの2012モデルを組み合わせたようなデザインとなった。胸番号もついに廃止し、スッキリした印象を与えるようになった。白地に黒縁の統一フォントとの相性も高い。が、クラブによって相性差が出るのはやはり良くない気が・・・。
アウェイは白地に黒のアクセント。デザインもホームの使いまわしと、とても昨シーズンぶっちぎりでJ1優勝したとは思えない手抜き仕様。国内用だったのがマシなのかどうかは分からないが、灰色や水色を使わず統一感を出したのはせめてもの救いか。
ACLモデルはまさかの2017年テンプレートの使いまわし。一方の胴部は京都や熊本が採用しているダイヤモンドグラフィックを採用。究極の手抜き仕様となった。正直呆れるレベルではあるが、別デザインを用意しただけまだ救いと考えておこう。なおこちらは胸番号を採用しており、フォントも独自デザインを使用。胸番号は余計だがカッコいい。
【番外編】J2・J3ユニフォームレビュー
最後に、今シーズンのJ2・J3の中で気になったユニフォームをピックアップしてレビューします(今回は採点はしません)。
ジェフユナイテッド市原・千葉
メーカー:Kappa
気が付けばJ2降格から12シーズンが経過したジェフ千葉。今シーズンのホームモデルは全身に蛍光黄を採用。千葉県の地図をカモフラージュ状にまとめたのは上手い。アクセントとなるラインはクラブカラーでもある赤と緑を採用しているが例年と比べるとちょっと控えめな印象。そして背番号フォント、クラブ創設以来から使用してきたフォントがJ統一フォントの導入で使用できなくなり、また統一フォントに緑が用意されなかったため、赤を選択した。2000年代半ばの濃紺アクセントを復活させて乗り切るのかなと思ってたけど、これはこれで良し。
アウェイは明るさの異なる濃緑を採用。こちらも千葉県カモフラージュを採用しており、ホーム以上に軍隊感が出ている。ただスポンサーの白ベタ率が高すぎるのは残念。アウェイユニの配色が毎年変わる数少ないJクラブ。アウェイの配色にやたらとうるさい者なので、応援していなくても毎年気になってしまう。
鹿児島ユナイテッド
メーカー:(自主製作)
J3鹿児島は今シーズンより、Jクラブでは史上初めてとなる「自主製作」でユニフォームを製作。従来のスポーツメーカーを通さない方式により、ユニフォーム価格を下げることに成功した。品質面においても大手メーカーの下請け会社が担当することにより維持しているとのこと。ユニフォームデザインとしては従来と同じく紺色を基調に、薩摩切子をモチーフとした「キリコダイヤモンド」を採用。その他ライン類のアクセントは一切なく、シンプルな仕上がりとなっている。アウェイ用はホームと同一デザインで昨シーズンと同じく白のシャツとパンツを採用しているが、今シーズンはソックスにピンクを採用した。桜島に由来すると思われる。
従来メーカーのテンプレートにとらわれないデザインにより、高いオリジナリティも期待できる。ユニフォーム価格の削減という観点からも、鹿児島の成功次第では流行する可能性もあるのでは。